第１期 第五章 運命の決断
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第五章 一話 朱雀クリスタルの意思
朱雀政府は熟慮の末、
ついにクリスタルの意思を受け入れ、
【秘匿大軍神召喚作戦】を発令した
そしてその決定はただちに、
候補生総代ミユウ・カギロヒにも
伝えられたが……
【ミユウ】
－－朱雀領民半数の命とひきかえに、
秘匿大軍神を召喚する作戦ですか！？
【カリヤ】
それが、セツナ卿の－－
朱雀クリスタルの判断です。
ルシとは、クリスタルの意思の代弁者。
彼女の言葉こそが、クリスタルの言葉なのです。
【ミユウ】
そんなことはわかっています！
あなたがたはその言葉を受け入れるのですか！？
【カリヤ】
……それが勝利のための、唯一の手段です。
議会も止むなく、その道を選ぶことにしました。
【ミユウ】
馬鹿な……半数もの民の命を犠牲に戦争に勝って、
なんの意味があるというのですか！？
民あっての国家でしょう！
軍も政府も、民を守るために存在しているはずです！
その命を軽んずれば、民の信頼は永遠に失われます！
この戦争に勝っても、いずれ国が滅びかねません！
【カリヤ】
……君の意見は理解できます。
しかし他に道はないのです。
我らが白虎に敗れれば、
国も朱雀クリスタルも、敵の支配下に置かれるでしょう。
その時、我が国の歴史は、確実に終わります。
故にクリスタルは、半数の民を犠牲にしてでも－－
【ミユウ】
戦争の勝利を目指した、と？
そのためなら民の命も、必要な犠牲だと……！？
【カリヤ】
……不敬ですよ、ミユウ君。
クリスタルの意思を人が計るなど、おこがましい。
そもそも我等が同意せずとも、セツナ卿は民の命を贄に、
召喚を行うでしょう……これは定められた道なのです。
ならば民の犠牲を無駄にしないためにも、本作戦は必ず
成功させねばなりません。協力してくれますね……？
【ミユウ】
……！
第五章 二話 候補生たちの道
ニンブスの攻撃により大打撃を受けた朱雀正規軍は
白虎の侵攻を押し留めることができず
敗色は濃厚になりつつあった
朱雀で進行中の【秘匿大軍神召喚作戦】は
状況を打開する切り札となるはずだったが－－
【エース】
総代……あんたもクリスタルの意思を、
受け入れるつもりか？
【ミユウ】
……勝利のためには、受け入れるべきなのだろう。
だが僕はあれからずっと、迷い続けている。
民衆を犠牲して、白虎を倒して……
それが本当に正しい道といえるのかと……！
そう思うなら、なぜ声を上げない！？
１人で抱え込んでいれば、いずれ迷いは晴れるのか！？
っ！
【エース】
総代、僕等は【アギト候補生】だ。
人々を救う救世主になるため、この魔導院に集まった。
どうすればアギトになれるかなんて、僕にはわからない。
だけどそれに少しでも近づくため、今日まで戦ってきた。
それはきっと、他の皆も同じはずだ。
だから－－共に考えよう、僕等が歩むべき道を。
【ミユウ】
……そうか……そうだったな。
僕等はそうして、ここまで歩んできた。
僕等の道を決めるのは、僕個人の意思ではない。
この魔導院にいる、すべての候補生だ。
－－９組、全候補生に極秘に伝達せよ。
これより【決断】を採る。
僕等には２つの道が用意されている。
１つはクリスタルの意思に従い、勝利を目指す道。
もう１つは、犠牲となる民を救うため……
クリスタルの意思に抗う道だ。
そうすれば恐らく、勝利への道は閉ざされるだろう。
しかし多くの命を救うことはできる。
僕等の進むべき道はどちらか－－
それを、選ぶのだ。
第五章 三話 アギトを目指して
全軍を挙げて侵攻してくる白虎軍を、
朱雀は【秘匿大軍神】により迎撃する予定だったが……
【軍令部長】
－－候補生総代。【秘匿大軍神召喚作戦】の成功のため、
お前たち候補生にも協力を要請する。
正規軍と連携し、敵の群れを国境で押し留めよ。
そこに秘匿大軍神を召喚し、敵を一挙に屠る作戦だ。
【カリヤ】
そう、それが朱雀が勝利するための唯一の道です。
協力してくれますね、ミユウ君……？
【ミユウ】
……いいえ、議長。
申し訳ありません。
僕等アギト候補生は－－
本作戦への協力を、断固拒否します！
【軍令部長】
な、なんだと！？
【カリヤ】
……発言の意味を理解しているのですか。
作戦を中止すれば、残された道は降伏しかありませんよ。
【ミユウ】
無論それは理解しております。
しかしこれが、僕等候補生の総意です。
クリスタルは神にも等しき存在ですが、今回ばかりは
その意思が、間違っていると認めざるを得ません。
その意思に従った先に待つのは、亡国の未来です。
ならば民を救うため、どうか勇気ある選択を……！
【カリヤ】
……！
なるほど、意思は固いようですね……
……わかりました、ミユウ君
その提言、聞き入れましょう。
【軍令部長】
カリヤ議長！？
この若者の言葉に踊らされるのですか！？
【カリヤ】
いいえ……恐らく私もその言葉を待っていたのでしょう。
これ以上の戦争継続は、本来不可能でした。
それに候補生の協力なくして、本作戦は成立しない……
ならばただちに白虎に対し、和平交渉を開始しましょう。
【軍令部長】
しかし国境にはすでに正規軍の兵が配備されています！
和平交渉が始まるまで、兵たちがもつかどうか……！
【カリヤ】
ならばそれを救うのが、彼等の役目。
こちらは聞き入れてくれますね、ミユウ君？
【ミユウ】
ええ、もちろんです。
それが僕等の責任ですから。
全候補生に告ぐ！
国境で孤立している正規軍の救出に向かえ！
これが僕等の、最後の任務となるだろう！
１人でも多くの同胞を救うのだ！
第五章 四話 人間の矜持
【カリヤ】
－－ミユウ君、白虎軍元帥シド・オールスタインが、
当方の降伏を受け入れました。
ただちに交戦を停止し、
和平条件の交渉を開始するとのことです。
【ミユウ】
そうですか……！
ではこれでもう、血が流されることはないのですね？
【カリヤ】
ええ、戦争はこれより終結に向かいます。
しかし１つだけ、危惧していることが……
【軍令部長】
ぎ、議長！
たった今、セツナ卿が戦場に出現したとの通信が！
【カリヤ】
セツナ卿が……？
秘匿大軍神召喚を、断行するためにですか？
【軍令部長】
いえ！ セツナ卿が召喚したのは、
軍神【バハムート零式】です！
セツナ卿は通常の軍神の中でも、
最強の力を持つそれを、自らの能力により召喚し－－
候補生たちを、攻撃し始めました！
クリスタルに逆らう者を、排除するつもりの模様です！
【カリヤ】
やはり……！ 我ら人間の選択に関わらず、
クリスタルは勝利を目指すつもりのようですね。
【ミユウ】
ならば僕等もあくまで、
自らの意思を貫くのみです！
アテンション！
我々はこれより
【バハムート討伐作戦】を敢行する！
クリスタルの意思を跳ね除け、
【人間】の矜持を示せ！
第五章 バハムート討伐
討伐成功
第五章 五話 終わりの始まり
候補生はクリスタルの意思に抗い、
軍神【バハムート零式】の討伐に成功
それと同時に、ルシ・セツナも【昇華】した
その後、朱雀は白虎に降伏
戦争はついに終結を迎えた－－
【エース】
……お疲れさま、総代。
これで僕等の戦争は、終わりだな……
【ミユウ】
……いや、まだ終わってはいない。
確かに白虎との戦争は終わった。
だがその戦は、来るべき真の戦いの前哨に過ぎない。
【エース】
総代……？ なにを言ってるんだ？
真の戦いって、なんのことだ？
【ミユウ】
今はわからずとも、すぐにわかる。
じきに、この世界に住むすべての人間が知るだろう。
君たちの真の敵と、【フィニス】という言葉の意味を。
【エース】
フィニス……？
伝承に記されている、世界の終末のことか……
まさかそれが、近づいているとでも言うのか？
そんな、バカなことが……？
【シド】
本日を以って、クリスタルに囚われた旧時代は終わった。
我ら【人】の手による、新たな時代を始めよう。
戦乱を平定し、新時代を築いた白虎の民こそ、
神話に語られる【アギト】である！
【ミユウ】
……そう、人と人の戦は終わった。
試練を乗り越え、審判を受けるに足る魂が揃った。
そして始まりの封は切れ、審判の刻が訪れる……
人よ、終末の中で踊るがいい。
【白虎兵】
し、シド元帥！緊急通信です！！
各地で【未確認の魔物】による襲撃を確認！
敵の数は不明、数え切れません！
【シド】
何だと……！？
正確に報告せよ、魔物とは一体なんだ！？
空が……
紅く染まった……！？
な、なんだというのだこれは……！？
まさか、これが……
これが神話に語られる、
【フィニス】だというのか！
ミユウの不吉な予言の通り
その刻は訪れた
怪物は魔導院の周辺のみならず
世界中に同時に出現し
無差別に人類を襲い始めた
それはまさに、神話に記された世界の終末－－
【フィニス】の到来であった
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